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「正義のパンチ」 アンパンマン
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アンパンマンとの記念撮影は子どもたちに大人気=香北町のアンパンマンミュージアムで | 正義の味方「アンパンマン」が一部の母親たちに不人気である。例えば私の知人の次のような体験談。東京都内の主婦由美子さん(30)は2歳の男の子の母親だ。キャラクターのかわいらしさにひかれてアンパンマンのビデオを繰り返し子どもに見せていた。すると、いつの間にか子どもがアンパンマンの無敵の技「アンパンチ」をまねするようになり、ある時、友だちに軽いけがを負わせてしまった。それ以来、心配になり一切見せるのをやめたという−−。アンパンマンとの上手な付き合い方を考えてみた。
ネットで論議沸騰
日本最大のインターネット検索サイトYAHOO!JAPANで「アンパンマン」と「暴力」という言葉の掛け合わせで検索を試みた。すると1400件以上がヒットした。内容はさまざまだが、主にアンパンマンが、悪者ばいきんまんに対し、「暴力」であっけなくことを解決することへの反論が目立つ。
一例を挙げるとこんな風である。
「ばいきんまんが可哀想かと。どっちかっていうと、問題を暴力で解決して、しかも子どもたちを洗脳しまくってる、アンパンマンの方が悪のような……」(育児日記を公表している主婦)
「アンパンマンのビデオを見せることで期待できるものは『沈静効果』だけ。ビデオをつけておくと子どもは静かになる。逆に、期待したくないものは(1)暴力−アンパンチをまねする(2)過度の熱中−洗脳されたかのようだ(3)排他性−アンパンマン以外の作品や絵本を極端に嫌う」(育児日記を公表している別の主婦)
「アンパンマンてさ、しょくぱんまんたちと一緒にばいきんまんをいじめてるんだよ。寄ってたかってさ。そういうのって、悪影響はないと言い切れるの」(個人ホームページを公表している男性)
原作者・やなせたかしさんの意図は
アンパンマンの作者は香北町出身のやなせたかしさん(83)。特別県勢功労の表彰式のため、このほど帰郷して県庁を訪れたやなせさんに、「アンパンマン」に込めた本来の意図を聞いた。
「けんかもせず、摩擦をおそれ、なにもしないで成長する子どもはいますか? 自分が子どものころは、よくチャンバラごっこをやったけど、だからって私は殺人はしませんよ。
アンパンマンがパンチを切り出すときは、ぎりぎりの線。そしてアンパンマンは一切、武器を持っていないでしょ。相手を傷つけないで、戦っているんです。そう受けとってもらえないのは少し不本意ですね。
大人になっていく過程で、いろいろ思い通りにいかないこともあります。子どもたちにはアンパンマンのように強く、優しく育ってほしいと願います」
《託児所では・・・》見せない
高知市秦南町1丁目のイオン高知ショッピングセンター内託児施設「キッズルーム・パオ」にはテレビもビデオもない。
この託児施設を経営する増田かおりさん(38)はその理由を次のように話す。
「アンパンマンは、いい作品だし、特にアニメ化される以前のミュージカル作品は素晴らしい。しかし、ビデオ化して商業ベースにのってから、『子どもにいいもの』というよりも『売れるもの』という観点が優先されてきたのではないか。幼児は強くてかっこいいものを求め、しかも見たものを素直に受け入れるので『アンパンチ』もまねして当然でしょう。家庭ではテレビ番組やビデオが子どもたちに垂れ流し的に見せられている。だから、せめて私たちの施設ではと、ビデオ類は置かず、木製玩具や絵本を代わりに用意しています」
見せる
高知市はりまや町1丁目の高知中央託児所。所長の安岡理子(まさ・こ)さん(37)は、0歳から6歳の子どもたち45人の世話をしている。自らも2人の子の母親だ。「私も初めての育児の時はアンパンマンや対決もののアニメは、見せていいか迷った」という。しかし、託児所長の職についてからは子から学んで、考えが少し変わった。
「同じものを繰り返し見たがるのは子どもの特性で、そのうち、アニメと現実の世界をしっかりと区別できるようになる。子どもがいけないことをした場合は、それがなぜいけないのか、根気よく注意してあげるんです」と言い、何事も経験させて学ばせるスタイルで託児所を運営している。1日に30分程度、アンパンマンのビデオなどを見せており、「それを子ども同士が話題にできればいい」と思っている。
●記者も考えた
インターネット上で飛び交うアンパンマン論争を追ってみても、その結末ははっきりとは見えない。しかし、今回、育児の専門家や原作者・やなせさんの本意を聞いて、私なりに思うこともあった。
アンパンマンは、内容そのものよりも、子どもへの見せ方、その後の親の対処の仕方で、その効果、効能は一八〇度変わる。
「正義と悪。強さと優しさ」。やなせさんが、アンパンマンに込めた本来のメッセージを、子どもたちにはしっかりと受けとめてほしい。それ以前に、大人がアンパンマンを表層的な理由で、子どもから遠ざけてしまうとすれば残念だ。私はそう思った。(原田亜紀夫、30歳、1女の父)
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